α1-アンチトリプシン欠乏症 特設サイト

α1-アンチトリプシン欠乏症
(AATD)

について
知りましょう

1. AATDってどんな病気?

α1-アンチトリプシン欠乏症(AATD)は、生まれつき体内で十分な量のα1-アンチトリプシン(AAT)という、たんぱく質を作ることができないまたは機能しない遺伝性の病気です。AATは、肺を炎症や酵素によるダメージから守る重要な働きをしています。このたんぱく質が不足したり、異常であると、肺が破壊されやすくなり、慢性閉塞性肺疾患(COPD)や肺気腫などを若くして発症する可能性があります。

また、一部の人では異常なAATが肝臓に蓄積し、肝炎や肝硬変の原因となることもあります。AATDは欧米人(特に北欧・中欧)に多い遺伝性疾患として知られていますが、日本人でも患者さんが確認されており、診断が遅れることがあり注意が必要です。この病気は厚生労働省により指定難病231に認定されています。

2. どのような場合にAATDを疑いますか?

AATDは遺伝子の異常が原因で発症する病気です。親から受け継ぐ2つの遺伝子のうち、どちらも異常な場合(ホモ接合型)や、1つが異常な場合(ヘテロ接合型)でも症状が出ることがあります。

AATDの遺伝形式:親からの遺伝子の受け継ぎ方

次のような方はAATDの可能性があり、検査が推奨されています。

  • 若年(45歳未満)でCOPDや肺気腫を発症した方
  • 非喫煙者でCOPDと診断された方
  • 原因不明の肝疾患を有する方
  • 家族にCOPDや肝疾患、AATDの方がいる方

無症状で経過する場合もあるため、家族歴がある方は特に注意が必要です。

3. AATDの診断方法と診断基準

AATDの診断には以下の検査結果を組み合わせて行われます。

血清AAT濃度の測定(スクリーニング検査)

基準値より低値の場合、さらなる精密検査が検討されます。

ジェノタイプ解析(遺伝子型の確認)

代表的な遺伝子変異(Z型、S型など)を確認し、診断を確定します。特にZZ型などのホモ接合型は重度の欠損に関連します。

肺機能検査・CTスキャン

肺気腫の分布や重症度を把握するために行われます。典型的には下肺野に優位な気腫性変化がみられます。

肝機能検査

異常なAATが肝臓に蓄積することによる障害の有無を評価します。

診断の目安

  • 正常範囲:90 mg/dL以上
  • 軽度欠損:50〜89 mg/dL(ヘテロ型の可能性)
  • 重度欠損:50 mg/dL未満(補充療法の対象)

血清AAT濃度が基準より低値であった場合、AATDの確定診断のためにジェノタイプの解析が推奨されます。

血液中のAAT濃度と診断の目安

4. どのような検査が必要ですか?

AATDのスクリーニングと診断の第一歩は、血液中のAAT濃度を測定する検査です。この検査は、外来で1回の採血で行うことができ、簡便かつ体への負担が少ない、もっとも推奨される初期検査です(保険適用あり)。
AAT濃度が基準値よりも低い場合は、次のような追加検査を行うことで、より正確な診断が可能になります。

ジェノタイプ解析(遺伝子型の確認)

代表的な変異(例:S型、Z型など)を調べ、AATDの原因となる遺伝子異常を特定します。

また、病気の進行度や臓器への影響を評価するために、以下の検査も行われることがあります。

  • 胸部CT(とくに下肺野に目立つ気腫性変化の確認)
  • 呼吸機能検査(1秒量や肺活量の低下を確認)
  • 肝機能検査(AST、ALT、γ-GTPなどの血液検査、必要に応じて超音波やCT)

これらを組み合わせることで、AATDの診断の正確性を高め、適切な治療方針を立てることができます。
特に若年性の肺疾患や原因不明の肝障害がある方は、まずAAT濃度の測定を検討することが非常に重要です。

5. AATDの治療法

肺の治療

  • 禁煙:進行を抑える最重要対策
  • 吸入薬(気管支拡張薬、ステロイド)
  • ワクチン接種(インフルエンザ、肺炎球菌)
  • 定期的な呼吸機能・画像検査

AAT補充療法

  • 血清AAT濃度が50 mg/dL未満であり、かつ臨床的にCOPDなどの肺障害が認められる場合
  • 2021年から保険適用

肝臓の治療

  • 肝障害がある場合は専門医による管理が必要
  • 重症例では肝移植が検討される場合もあります

6. ご家族への検査とカウンセリング

AATDは遺伝性疾患であるため、患者さんの親、兄弟姉妹、子どもなどの近親者も保因者である可能性があります。そのため、家族にも血清AAT濃度検査を勧めることが推奨されます。また、検査を受ける前には遺伝カウンセリングを受けることで、検査結果の意味や今後の対応について理解を深めることができます。

あなたやご家族の健康を守るために、
気になる症状がある場合は
早めに医療機関に相談しましょう

参考:日本呼吸器学会 α1-アンチトリプシン欠乏症 診療の手引き2021[第2版]
監修:順天堂大学大学院 医学研究科呼吸器内科学 准教授 佐藤 匡先生