希少疾患への挑戦11
希少疾患患者を支える医薬品流通

医薬品流通は、どんな災害時であれ止めることができません。

そのため、物流を確保するために日ごろから様々な工夫がなされています。

希少疾患に処方される薬剤(オーファンドラッグ)の場合も、 安定供給のために様々な配慮がなされています。

オーファンドラッグ流通の特殊性

多くの場合、日本での医薬品の流通は、製薬会社から医薬品卸に販売・出荷された後、医薬品卸が取引のある医療機関から発注を受けて納入されるという流れです。 医薬品をすぐ納入できるよう、卸は各地域に在庫を持っておきます。 使用量の多い医薬品であれば、ほぼ全社が全国に在庫を置いています。 こうして速やかに医薬品を患者さんに届けられる仕組みになっています。
一方で、オーファンドラッグは対象となる患者数が少なく、納入する医療機関が少ないため、通常の医薬品と同様に複数の卸が全国にくまなく在庫を配置すると、使用されずに廃棄せざるを得ないものが出てきます。 無駄が増えるとコストが高くなるため、医薬品の安定供給に支障が生じかねません。 そのため、オーファンドラッグの場合は通常の医薬品と違った工夫が必要になります。

オーファンドラッグ流通の工夫

オーファンドラッグの中でもウルトラオーファンと呼ばれる、患者さんが全国で1,000人以下の疾患に使用される医薬品では、1社の卸のみで流通する体制を取っているケースが多くみられます。 もちろん、ほかの卸から医療機関に納入することは可能ですが、基本的な流通を1社のみにすることで、無駄を抑えつつ供給を安定的にできるようにする工夫です。
例えば、患者さんの数が全国に10人で、患者さんひとりが1か月に1箱使用する医薬品があるとします。 1年間に必要な量は120箱ですが、通常の医薬品のように、例えば3社の卸が全県に1箱ずつ在庫を置いておくだけで、在庫は約150箱必要になります。 理論上は可能かもしれませんが、医療機関から発注が来る卸は通常は1社だけですし、患者さんのいない地域の在庫は、期限切れで廃棄されるリスクが高くなってしまいます。
また、対象は希少疾患とは限りませんが、これから進む再生医療や遺伝子治療では、その患者さんだけのために用意された薬である場合があるため、トレーサビリティが必要になります。 さらに品質管理上、常にマイナス150度以下で運べる温度管理が必要になるなど、これまで以上の工夫や新しい技術が開発されています。

患者さんに合わせた製造・在庫管理・流通

近年では、承認される新有効成分含有医薬品の中でのオーファンドラッグの割合が3割と、日本でもオーファンドラッグの比率が高くなってきました。
医薬品卸は、医薬品の安定供給という使命を担っています。 患者さんの少ない医薬品であっても必要なときに必要な医薬品を届けることを期待されています。 製薬会社も同様に、製造するにあたって、足りなくてもいけませんし、余らせて廃棄を生じさせることもできません。
患者さんが少ない場合、どこに患者さんがいて、どこで使用される可能性があるか、卸と製薬会社との情報交換も重要になってきます。 患者さんに合わせて作る、患者さんに合わせて在庫を管理する、患者さんに合わせて届けるということが重要なのです。

CMIC季刊誌 C-PRESS NO.17 より 転載
(電子ブックが開きます)

医療従事者向け「希少疾病情報」ページ
[要医療従事者確認]