2025.10.11

狂犬病とは

狂犬病とは

狂犬病とは

狂犬病は動物から人にうつる病気(動物由来感染症)のひとつで、いったん発症するとほぼ100%死亡する、とても恐ろしい病気です。原因となるのはラブドウイルス科リッサウイルス属に分類される「狂犬病ウイルス」(学名:Lyssavirus rabies)で、ヒトを含むすべての哺乳類が感染する可能性があります。

どのように人に感染しますか?

狂犬病を発症した動物の唾液には、たくさんの狂犬病ウイルスが含まれています。人がこのような動物に咬まれたり、引っかかれたりすると、傷口から唾液とともにウイルスが体内に侵入し、感染してしまいます。
傷口から体内に侵入したウイルスは、ゆっくり増殖しながら末梢神経に感染し、神経を伝って脊髄、さらに脳へと移動します。脳に達したウイルスはさらに増殖し、様々な症状が現れるようになります。感染してから症状が現れるまでの期間(潜伏期)は、傷の場所や程度によって異なりますが、通常は1~3ヵ月です。1年以上に及ぶ例も報告されていますが、一般に、傷が頭部に近いほど発症までの期間が短くなるといわれています。

どのような症状が現れますか?

はじめは、熱が出たり、体がだるくなったり、食欲がなくなるなど、風邪のような症状や、咬まれた部位の痛む、しびれるといった感覚の異常が現れることがあります(前駆期)。この時点で、症状から狂犬病を疑うことは非常に困難です。その後、病気が進行して急性神経症状期にはいると、落ち着きのなさ、強い不安感、幻覚などの神経症状があらわれ、狂犬病に特徴的な恐水症※1、恐風症※2などの症状もみられることがあります。最終的には脳神経や全身の筋肉が麻痺し、昏睡状態を経て呼吸が止まり、亡くなってしまいます。

※1 水を飲むと喉が痙攣を起こして非常に苦しいため飲水を避けるようになる症状
※2 顔面に冷たい風があたると喉が痙攣を起こして非常に苦しいため風を避けるようになる症状

主な症状の経過

狂犬病は、残念ながら発症前に診断することはほぼ不可能です。また、発症してしまうと確立された治療法はありません。そのため、もし狂犬病の疑いがある動物に咬まれるなど感染の可能性がある場合は、できるだけ早くワクチンを接種して発症を防ぐことがとても大切です。

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参考文献
伊藤直人, 西園晃: ウイルス, 2024; 74(1): 1-8.
倉井華子: 臨床検査, 2024; 68(12): 1514-1518.
斉藤信夫,西園晃: 小児科臨床, 2017; 70(増刊号): 2352-2358.