Interview#04

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臨床開発一筋のキャリアが、希少疾患医薬品開発へとつながった

古川さんは新卒として製薬企業に入社して以来、30年以上にわたり医薬品の臨床開発(注1)に携わってきました。入社当初は、臨床試験の計画立案、モニタリング、厚生労働省への医薬品の製造販売許可の承認申請までを一つの部署で担う時代。現在のように役割が細分化されていなかった当時、臨床開発の全工程に関わりながら経験を積んできました。 

「当時は先輩から『開発マン』のノウハウを学びながら、プロトコール(注2)を作成したり、論文をまとめたり、医療機関でのモニタリング(注3)を担当したりと、幅広い業務を経験しました。その積み重ねが、後の仕事に大きく生きていると感じています。」

 

その後、さまざまな治療領域の医薬品開発を経験し、2010年以降は希少疾患医薬品開発センターに所属。希少疾患医薬品の開発に本格的に関わるようになりました。また、希少疾患啓発活動やRare Disease Day(RDD)への取り組みにも携わってきました。 

「希少疾患は、患者さんの数が少ない分、開発の難易度は高い領域です。一方で、多くの患者さんが新しい治療法を待ち望んでおられることから、やりがいの大きさを強く実感しています。」 

そうした約10年にわたる希少疾患医薬品開発の経験を経て、2021年5月にオーファンパシフィックへ入社。入社当初から一貫して尿素サイクル異常症治療薬の開発に携わってきました。 


(注1)臨床開発:医薬品候補品の安全性と有効性を評価するために患者さんや健康な方を対象に行う試験(臨床試験)を実施し、新たな医薬品を創出する一連の活動を臨床開発と呼ぶ 

(注2)プロトコール:臨床試験の内容を規定した計画書 

(注3)モニタリング:臨床試験が被験者の安全と人権の保護、最新のプロトコールや関連法規に則って適正に実施・記録・報告されているかを確認する品質管理活動

 

 

「希少疾患だから」ではなく、「待っている患者さんがいるから」 

オーファンパシフィックへの入社理由について、古川さんは「希少疾患に向き合う会社である中で、疾患の種類を問わず、治療薬を待っている患者さんに新しい薬を届ける仕事を続けたいという思いがありました。」と語ります。 

その原点は、過去に携わった片頭痛治療薬の開発経験にありました。当時、日本ではまだ使えなかった治療薬を待ち望む患者さんの声が、臨床試験の被験者募集を通じて数多く寄せられたのです。 

「『早くこの薬を日本で使えるようにしてほしい』という患者さんからの期待や応援メッセージに触れ、患者さんが新しい治療薬をどれほど待ち望んでいるのかを実感しました。あの経験が、私の仕事の原点になっています。」 

希少疾患であっても、一般的な疾患であっても、「待っている患者さんがいる」という点に違いはありません。その思いが、オーファンパシフィックでの挑戦を後押ししました。 

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治療薬の開発のスタートと、ドラッグラグ解消への挑戦 

この治療薬はすでに欧米では承認されていた薬剤でしたが、日本では開発が行われていないこと(ドラッグラグ)が大きな課題でした。古川さんが入社した2021年当時、この治療薬の権利を持っている海外提携先企業との契約はまだ締結前でしたが、日本での開発を見据え、可能な範囲で準備を進めていました。契約締結後、2022年5月に正式にプロジェクトが動き出しました。その後は速やかに開発体制が整えられ、同年9月には治験届出を医薬品医療機器総合機構へ提出するに至りました。 

日本での承認申請にあたっては、海外で取得されたデータの活用が前提となりました。そのため、国内で実施した臨床試験のデザインや評価項目は海外で行われた試験と同一とし、日本独自の工夫を盛り込む余地は限られていました。 

特に患者さんの負担となったのが、多数回の採血を伴う薬物動態(薬の体内での濃度推移)や血中アンモニア濃度の評価に伴う2泊3日の入院を2回行う試験デザインです。 

「患者さんの負担軽減も検討しましたが、海外データとの比較可能性を確保することが不可欠でした。」 

そのような状況の中でも、当初10例程度と見込んでいた症例数を大きく上回り、最終的に18例の患者さんが試験に参加しました。 

「治験責任医師の先生方と患者さんの、この薬に対する期待の大きさを強く感じました。ご協力いただいた患者さんには、心から感謝しています。」 

 

 

「飲みやすさ」が患者さんのQOLを大きく変える 

この薬剤の特徴の一つは、自社の既存薬と比べた際の「飲みやすさ」です。 

「既存薬は、1回の服用量が多かったり、臭いや味が課題となる患者さんがおられます。」 

実際に確認した際に、強い薬品臭や服用量の多さに課題を感じたと古川さんは振り返ります。こうした服薬負担の軽減は、治療継続やQOL(生活の質)の向上に直結する重要な要素です。 

「有効性や安全性が同等であれば、飲みやすさも条件に薬を選べること自体が、患者さんにとって大きな価値になると考えています。」 

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患者さんの声が、開発の「ゴール」をより具体的にした 

オーファンパシフィックでは、尿素サイクル異常症の患者さんを対象としたインタビューや、患者さん・ご家族から、満たされていない課題を直接お伺いする機会を設けています。こうした機会は古川さんにとっても大きな学びとなりました。 

「文献で読んでいた『飲みにくさ』や『治療の大変さ』が、実際の患者さんの言葉として直接届き、改めてこの薬を届ける意義を実感しました。」 

また、患者さんのお話を通じて、早期診断と早期治療の重要性についても強く感じたといいます。 

「早く診断され、適切な治療につながれば、患者さんは早く日常生活を送ることができます。薬の開発だけでなく、診断率の向上も重要な課題だと改めて認識しました。」 

 

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少数精鋭で成し遂げた承認取得、そして次の一歩へ 

この薬剤の開発は、少人数体制のオーファンパシフィックと、多くの業務を担った外部パートナーとの協働によって進められました。限られたリソースの中で、関係者が一丸となり、スピード感を持って業務を進めたことが、プロジェクト推進の大きな力となったといいます。2022年の本格始動から、2024年12月の承認申請を経て、承認取得まで非常にタイトなスケジュールでした。 

「この短期間で承認までたどり着けたのは、チーム全体の努力の結果だと思います。」 

また、承認申請直前に希少疾病用医薬品の指定を短期間で取得できたことも、大きな成果の一つでした。 

「今回の経験は、オーファンパシフィックにおける希少疾患医薬品開発の一つの参考事例になると考えています。得られた学びを、今後の開発につなげていきたいです。」 

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患者さんを思い描きながら、次の挑戦へ 

臨床開発の役割は「承認を取得するまで」ですが、古川さんはその先にいる患者さんを常に意識するようになったといいます。 

「尿素サイクル異常症の患者さんと向き合う中で、開発の先にある“届ける意味”を強く意識するようになりました。『1日でも早く』という思いが、これまで以上に強くなりました。」 

これからも、患者さんの声に耳を傾けながら、より良い開発の形を模索していく――。 
今回の開発で得た経験は、次なる希少疾患医薬品開発へと確実につながっていきます。 

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