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Patients and Families

希少疾患への挑戦4

希少疾患の早期診断・早期治療を可能にする
新生児マススクリーニング

国立研究開発法人国立成育医療研究センター研究所
マススクリーニング研究室 室長 但馬 剛 先生

希少疾患の患者さんを見つけ出すシステムの一つに「新生児マススクリーニング」がある。
先天性の疾患の中には、早期発見・治療により発症を防ぎ、正常な成長発達が得られるものがあり、日本では1977年より開始された公的事業である。
国立成育医療研究センター研究所マススクリーニング研究室長 但馬 剛先生に新生児マススクリーニングについてお話をうかがった。

マススクリーニングの目的、意義

希少疾患には先天性の病気が数多くありますが、その中には早期の治療開始によって、症状を予防できるものがあります。新生児マススクリ−ニングは、そのような病気を生後早期に見つけて治療を始めることで、生まれ持った病気から子供たちを守る、母子保健事業のひとつです。
新生児マススクリーニングで発見される疾患は、ホルモン分泌機能の低下が原因である「内分泌疾患」と、様々な栄養素を利用したり分解する過程がうまく進まない「先天代謝異常症」に大別されます。先天代謝異常症はいずれも希少疾患です。希少疾患は発症しても診断がつくまでに時間がかかり、その間に重症化してしまう恐れもあるため、症状のない新生児期にマススクリーニングで発見する意義は大きいと言えます。

実施の対象や手順

生後5日前後の新生児のかかとから、数滴の血液をろ紙に染み込ませ、医療機関から各自治体の検査センターに郵送します。ろ紙の中に含まれる微量の成分を測ることで病気の可能性の有無を調べます。
検査で陽性を示した場合は再採血が行われ、繰り返し陽性となった場合は精密検査を受けることになります。精密検査で病気が否定されることも少なくありませんが、病気が確定された場合は、各地の専門医の診療を受ける事になります。

見つけられる疾患と歴史

新生児マススクリーニングは、「子どもの成育段階でおこる障害発生の予防事業」という公的事業であり、日本では1977年から開始されました。

2011年までは2種類の内分泌疾患(先天性甲状腺機能低下症、先天性副腎過形成)と、4 種類の先天代謝異常症(フェニルケトン尿症、メープルシロップ尿症、ホモシスチン尿症、ガラクトース血症)が検査対象疾患でしたが、1997年から「タンデムマス法」という感度のよい測定機器を用いた検査が試験研究として開始され、2012年までに約200万人の新生児を検査して、216人の先天代謝異常症の患者さんが見つかっています(表)。

この成果を受けて、2014年までに全国すべての都道府県で、タンデムマス法による新生児マススクリーニングが、正式に導入されました。これによって新たに19 疾患が加わり、25種類の疾患が検査できるようになりました(図)。

このうち22疾患がタンデムマス法で検査されますが、現在すべての自治体で検査されている「一次対象疾患」は16種類で、残りの6疾患は自治体ごとに検査実施状況が異なる「二次対象疾患」となっています。 なお、CPT2欠損症については、全自治体での実施へ移行するための準備作業が行われています。

課題と今後の展望

疾患の特徴はそれぞれ異なるので、課題がそれぞれにあります。
例えば、「漏れなく見つける」という点について説明すると、新生児マススクリーニングはあくまでスクリーニングであり、診断ではないので、どこかに基準値を置く事が必要なのですが、本当は患者であるのに検査で正常判定になってしまうと(偽陰性)、後から病気が発症して、重大な結果を生じることにつながります。とはいえ、念のためにと基準値を下げ、本当はその病気ではないにもかかわらず、検査で陽性となる(偽陽性)お子さんをむやみに増やせば、ご家族は大変なストレスを受けますので、治療や経過観察が必要な子を効率よくスクリーニングしなければなりません。対象疾患の1つで、乳幼児期に低血糖発作を繰り返したり、急死する危険もある中鎖アシルCoA 脱水素酵素(MCAD)欠損症は、新生児マススクリーニングで発見されればほぼ完全に発症予防ができる疾患で、偽陽性の出る率は比較的低く抑えられています。
偽陽性率の高低は対象疾患によって様々であり、検査の精度管理や、各疾患の指標項目・基準値設定の妥当性などを検討する必要があります。全国のマススクリーニング施設を対象とする外部精度管理については、国立成育医療研究センター研究所マススクリーニング研究室で実施しています。

偽陽性・偽陰性の問題に関しては、マススクリーニング検査で陽性を示した検体を用いて、より特異性が高い異常代謝産物の測定を行う「二次検査」の方法の開発を進めています。

最後に、重症度・発症リスクと適切な治療管理方針についてですが、これらを的確に判断するための情報を得るには、ひと世代かけて患者の追跡調査を行う必要があります。
新生児マススクリーニングは自治体ごとに実施されていますが、本事業の有用性評価と、向上のためのフィードバックを得るためにも、今後は全国的な患者登録、長期追跡の仕組みを構築することが望まれています。

CMIC季刊誌 C-PRESS NO.8 より 転載
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